10年・10万kmが近づいた車を買い替えるか乗り続けるか。乗り続ける側の年間コストと買い替え側の総額を同じ「1年あたり」に直して比べる手順を示します。自動車重量税の重課が何年で始まるかは国土交通省、自動車税の重課は総務省の一次情報で確認しました。
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「10年」は買い替えの合図ではありません。自動車重量税の重課が始まるのは13年経過からで、10年時点では税額は上がらないことを国土交通省の資料で確認しました。判断すべきは年数ではなく、乗り続ける側と買い替える側を「1年あたりの負担」に直したときの大小です。
車が10年目に近づくと、周囲から「そろそろ買い替えでしょう」と言われます。10年・10万kmは、なんとなく買い替えの節目として共有されている区切りです。
ただ、この10年という年数に制度上の裏付けがあるとは限りません。調べたところ、少なくとも自動車重量税が上がるタイミングは10年ではありませんでした(後述します)。
この記事では年数で反射的に決めるのではなく、乗り続ける側と買い替える側を「1年あたりいくらか」に直して並べる手順を示します。当てはめる数字はご自身のものを使ってください。
なお車検の見積もり額が高くて迷っている場合は起点が違います。そちらは車検10万超えは乗り換えどっち?で見積もりの分解から整理しています。この記事は「経過年数10年」が起点です。
乗り続ける/買い替える|4つの観点で整理
まず全体像を並べます。
| 乗り続ける | 買い替える | |
|---|---|---|
| 年あたりの負担 | 車検費用と整備費を年割りにした額。年によって上下し、読みにくい | 車両価格−売却額+諸費用を保有年数で割った額+新しい車の維持費。読みやすいが総額は大きくなりやすい |
| リスク | 経年で故障の確率が上がる。突発的な出費と、直前まで金額が分からないこと | 想定より早く手放すと、初期費用の回収が済まないまま損失が確定する |
| 向く家庭 | 走行距離が少ない/同じ車を長く使いたい/手元資金や月々の固定費を増やしたくない | すでに整備費がかさみ始めている/家族構成が変わった/支出を定額にして家計を読みたい |
| 注意点 | 「まだ動く」が続くうちに査定額が下がり、買い替えの原資が細っていく | 「10年だから」という年数だけを理由にすると、支払う総額が整備費を大きく上回ることがある |
乗り続けるのは「読めない出費が不定期に来る」、買い替えは「読める出費が長く続く」。性質が違うので、同じ1年あたりに直さないと比較できません。
「10年」で実際に何が変わるのか
10年という節目で変わるものを、確認できた事実と確認できなかった項目に分けて整理します。
自動車重量税の重課は「13年」から(10年では上がらない)
まず税金です。国土交通省が公開している「令和8年度税制改正に伴う自動車重量税の税額の基本的な考え方(フローチャート)」を確認したところ、当分の間税率は「13年未満車」「13年経過車」「18年経過車」の3区分に分かれていました(2026年7月20日確認)。
この「経過」の数え方も、同じ資料に定義があります。
- 登録自動車・小型二輪車:初度登録年月(小型二輪車は初度検査年月)から12年10か月以後に自動車検査証の交付等を受ける場合が「13年経過」(租税特別措置法 第九十条の十一の二、第九十条の十一の三)
- 検査対象軽自動車(二輪を除く):初度検査年から13年を経過した年の11月以後に自動車検査証の交付等を受ける場合が「13年経過」(租税特別措置法施行令 第五十一条の三)
- 「18年経過」の考え方も同様
つまり、10年目の車検では自動車重量税の重課は発生しません。「10年を過ぎると税金が上がるから買い替え」という理由づけは、少なくとも重量税については成り立たないということです。
一方で、具体的な税額はこの記事には書きません。税額が車種・車両重量・エコカー減税の適用で変わるうえ、税制改正で金額そのものが動くためです。実際、国土交通省の税額表(令和8年度税制改正時点)と、環境省が総務省の検討会に提出した資料(令和7年1月時点)では、参照している時点が違うために掲載額が一致しませんでした。
実額は国土交通省の「次回自動車重量税額照会サービス」で確認できます。車台番号と検査予定日を入力すると、次回の継続検査時に必要な自動車重量税額が照会できます(2026年7月20日確認)。推測するより確実です。
なお自動車税(種別割)にも、環境負荷に応じて税額を重くするグリーン化特例の重課があります。総務省の「やさしい地方税」では、新車としての登録から一定期間が過ぎている自動車(ガソリン車などは13年、ディーゼル車は11年)について、毎年の税額が15〜20%加重されると説明されています(税率等は2026年4月1日時点。2026年7月20日確認)。この仕組みが2001年度から導入されたことは、環境省が総務省の検討会に提出した資料で確認しました(同日確認)。
つまり自動車税(種別割)の側でも、10年は重課の節目ではありません。ただし加重割合には15〜20%と幅があり、車種区分によって変わります。実額はお住まいの都道府県の公式案内でご確認ください。
部品の劣化は「距離」と「時間」の2軸で進む
10年で確実に進むのは、税金より部品の劣化のほうです。ここで大事なのは、劣化には距離由来のものと時間由来のものがあるという点です。
ブレーキパッドやタイヤの溝は、走った分だけ減ります。一方でゴムホース類、樹脂部品、各種シール、バッテリー、タイヤのひび割れなどは、走らなくても年数で進みます。
だから「年間5千kmしか走っていないから10年でも新車同然」とは言えませんし、逆に「10年だからもう限界」とも言えません。整備工場にどの部品があと何年もちそうかを聞くのが、この段階での正しい情報の集め方です。
査定額は下がり続ける
3つ目は売却額です。一般に、経過年数と走行距離が増えるほど査定額は下がります。厄介なのは、「まだ乗れるから」と先送りしている間にも買い替えの原資が細っていくことです。判断を保留すること自体にコストがある、という点は後半でもう一度触れます。
乗り続ける場合の年間コストの出し方
計算式は単純です。
A =(車検費用 + 2年分の整備費)÷ 2 + 年間の税金・保険
車検は2年に1度なので、2で割って1年あたりに直すのがポイントです。ここを年割りにしないと、車検がある年だけ突出して見え、買い替えが不当に有利に映ります。
入れる項目は次のとおりです。
- 車検費用:法定費用(自動車重量税・自賠責保険料・印紙代)+車検基本料+今回必須の整備
- 2年分の整備費:オイル、バッテリー、タイヤ、ブレーキなど、次の車検までに見込まれる交換
- 年間の税金・保険:自動車税(種別割)と任意保険料
2つ目の「2年分の整備費」を0で置かないでください。10年目の車で、次の2年に何も起きない前提は楽観的です。読めなければ、今回「そろそろ交換時期」と言われて見送った項目の金額を入れると現実的になります。
ガソリン代・駐車場代は乗り続けても買い替えても同じようにかかるので、燃費差を無視できる範囲なら両方から外して構いません。維持費の内訳は車の維持費の内訳に整理しています。
買い替える場合の総額の出し方
買い替え側も同じく1年あたりに直します。
B =(車両価格 − 今の車の売却額 + 諸費用)÷ 保有予定年数 + 新しい車の年間維持費
3つ注意点があります。
1. 売却額を必ず引く。今の車を手放して得た金額は買い替えの原資です。0のままにすると買い替えは必ず不利に出ます。この1項目が結論をひっくり返すことがあります。
2. 保有予定年数を先に決める。同じ車両価格でも、5年で手放すのと10年乗るのとでは年あたりの額が倍違います。
3. リースなら月額×12がそのまま年額。車両価格・税金・自賠責が月額に含まれる形が多く、購入とは項目の切り方が変わります。同じ年数・同じ条件で総額に直す作業はリースvs購入 7年総額シミュレーターで試せます。
損益分岐の考え方|走行距離が少ない家庭は結論が変わる
AとBを出したら、比べるだけです。A<Bなら乗り続ける、A>Bなら買い替えが、金額の上では有利になります。
ここで効いてくるのが走行距離です。年間の走行距離が少ない家庭では、
- 距離由来の消耗(タイヤ、ブレーキ)が緩やかで、Aの整備費が積み上がりにくい
- 同じ10年でも走行距離が少ないぶん、査定額が相対的に残りやすい傾向がある
- 燃費改善で浮くガソリン代が小さく、買い替えのメリットが出にくい
という3方向すべてが乗り続ける側に有利に働きます。逆に年2万km・3万km走る家庭では整備費の積み上がりも査定額の目減りも速く、同じ10年でも景色が違います。
「10年だから買い替え」という一律の基準が使えないのは、この距離の差が計算に入っていないからです。
わが家の考え方
正直に書くと、わが家は自分の車の車検費用の実額を把握していません。だから「10年目の車検がいくらだった」という体験談はここには書けません。書けるのは前提の違いだけです。わが家は2021年式の車を1台持っていて、走行距離は約15,000km。年間にすればおよそ5,000kmです。この調子なら10年経っても5万km程度で、世間で言う「10年10万km」の10万kmには半分しか届きません。つまりわが家にとって10年は「10年5万km」であって、同じ言葉でも中身が違う。もうひとつ、車を用意するときにリース・購入・中古を比較しましたが、そのとき頭にあったのは「車の月額は1万円まで」という一本のラインでした。この基準を上のBの式に入れると、年12万円を超える買い替えは検討の外に出ます。同じ10年でも、走る距離と持っている上限ラインが違えば結論は変わる。これはn=1の話であり、一般論として断定するつもりはありません。
乗り続けたほうがよいケース
- 年間走行距離が少ない。距離由来の消耗が緩やかで、Aが膨らみにくい家庭です。
- 整備の指摘が単発で、必須項目が少ない。1か所の不調は偶発的なことがあります。
- 査定額がほとんど残っていない。Bから引ける金額が小さければ、買い替えの原資が作れません。
- 手元資金や月々の固定費を増やしたくない。住宅ローンや教育費と並行する時期には、それ自体が合理的な判断です。
- 同じ車を長く使いたいという意向がある。金額以外の価値を計算に入れないほうが不自然です。
買い替えたほうがよいケース
- 複数箇所の必須整備が同時に出ている。車全体の経年を示すサインになりえて、次の2年の整備費が読めなくなります。
- 査定額がまだ残っている。値が付くうちに動くほど、Bを押し下げる効果は大きくなります。
- 家族構成や使い方が変わった。送迎が始まる、荷物が増えるなど、車格の見直しが必要なら年数は自然な区切りになります(ファミリーカーの選び方)。
- 突発的な出費より定額の支払いのほうが家計を管理しやすい。有利不利ではなく、家計設計の思想の問題です。
一方で、「10年だから」という年数だけを理由に買い替えるのは危険です。上で確認したとおり、10年時点では重量税の重課も発生しません。年数はきっかけにはなりますが、根拠にはなりません。
そして「絶対に乗り続けたほうが得」も「必ず買い替えたほうが安い」も成立しません。AとBのどちらが小さいかは、走行距離・車の状態・査定額・保有予定年数という、家庭ごとに違う4つの数字で決まります。
判断の前に、今の車の査定額を知っておきたい理由
理由は3つあります。
1. 査定額が分からないと、そもそもBが計算できない。売却額はBから直接引かれる数字です。空欄のままではAと比べられません。査定額は「参考情報」ではなく計算に必須の入力値です。
2. 保留している間も査定額は下がる。「まだ乗れるから来年考えよう」という判断自体は合理的ですが、その間も経過年数は増えます。買い替えを選ばないとしても、いま自分の車にいくら値が付くのかを知っておくことは次の判断材料になります。
3. 1社の提示額だけでは判断材料として弱い。買取価格は業者によって差が出ることがあります。1社の金額だけでAとBの大小を決めると、判断がその1社の水準に引きずられます(この点は査定は1社だけでいいのかで整理しています)。
わが家の考え方
この点については、私自身が反面教師です。前に乗っていたかなり古いアクアを、レクサス販売店でそのまま下取りに出しました。金額は50万円。他社と比較はしていません。提示額を見て「安い」とは思わなかったので後悔もしていないのですが、いま振り返れば、比べていない以上「安くなかった」と言い切る根拠も私にはありません。これはあくまで私1人の事例で、他社に出していたら高かったのかどうかも分からないままです。ただ、10年という節目で数十万円が動く判断をするときくらいは、比べてから決めてもよかったと考えています。
査定額の集め方や、電話連絡の扱いを含めた進め方は車を高く売る方法に整理しています。
まとめ
10年で買い替えるか乗り続けるか。やることは4つです。
- 年数を根拠にしない。自動車重量税の重課が始まるのは13年経過からで、10年時点では上がりません(国土交通省の資料で確認、2026年7月20日)。実額は次回自動車重量税額照会サービスで照会できます。
- Aを出す。(車検費用+2年分の整備費)÷2+年間の税金・保険。整備費を0で置かないこと。
- Bを出す。(車両価格−売却額+諸費用)÷保有予定年数+新しい車の年間維持費。保有予定年数を先に決めること。
- 自分の走行距離を計算に入れる。年5千kmの家庭と年3万kmの家庭では、同じ10年でも結論が変わります。
この計算を成立させる最後のピースが今の車の査定額です。数万円しか付かないならAが有利に、数十万円残っているならBが現実的な選択肢に変わります。結論を動かすのは経過年数ではなく、こちらの数字のほうです。
確認できたこと:自動車重量税の当分の間税率が「13年未満車/13年経過車/18年経過車」に区分されること、その「経過」の数え方(登録自動車は初度登録年月から12年10か月以後、検査対象軽自動車は初度検査年から13年を経過した年の11月以後)、次回自動車重量税額照会サービスの存在(国土交通省「令和8年度税制改正に伴う自動車重量税の税額の基本的な考え方(フローチャート)」および同省サイト、2026年7月20日確認)。自動車税(種別割)のグリーン化特例(重課)がガソリン車など13年・ディーゼル車11年を対象に15〜20%の加重であること(総務省、同日確認)、同特例が2001年度導入であること(環境省資料、同日確認)。
確認できなかったこと:重量税の車種別・重量別の確定税額(資料間で参照時点が異なり金額が一致しないため記載せず)。自動車税(種別割)の重課について、15〜20%のうちどの区分に何%が適用されるかの内訳(総務省の資料は幅としてのみ記載)。実額は公式の照会サービス、または運輸支局・お住まいの都道府県にご確認ください。
よくある質問(FAQ)
車は10年で買い替えるべきですか?
「10年」を節目とする税制上の区切りは確認できませんでした。自動車重量税の重課が始まるのは「13年経過」からで、10年時点では重量税は上がらないことを国土交通省の資料で確認しています。自動車税(種別割)のグリーン化特例(重課)も、総務省の資料ではガソリン車などが13年、ディーゼル車が11年で、いずれも10年ではありません(2026年7月20日確認)。判断すべきは年数ではなく、乗り続ける場合の年あたり負担と、買い替える場合の年あたり負担のどちらが小さいかです。
自動車重量税は何年で上がりますか?
国土交通省の税額フローチャートでは、当分の間税率が「13年未満車」「13年経過車」「18年経過車」の3区分に分かれています。登録車の「13年経過」は初度登録年月から12年10か月以後に車検証の交付等を受ける場合、検査対象軽自動車は初度検査年から13年経過した年の11月以後です(2026年7月20日確認)。実額は車種と重量で変わるため、国土交通省の次回自動車重量税額照会サービスで確認してください。
走行距離が少なければ10年でも乗り続けていいですか?
同じ10年でも、年3万km走った車と年5千kmしか走らない車では消耗の度合いがまったく違います。年間5千kmなら10年でも5万km程度で、距離由来の消耗は緩やかです。ただしゴム・樹脂部品やバッテリーは走らなくても時間で劣化するため、距離が少ない=整備が要らない、ではありません。距離と年数は別の軸として見てください。
乗り続けるか買い替えるかの損益分岐はどう出しますか?
両方を「1年あたりいくらか」に直して並べます。乗り続ける側は(車検費用+年間整備費+税金・保険)を年割りに、買い替える側は(車両価格−今の車の売却額+諸費用)を保有予定年数で割り、そこに新しい車の維持費を足します。この計算は今の車の査定額が入らないと成立しません。
10年落ちの車でも売れますか?
一般に経過年数と走行距離が増えるほど査定額は下がりますが、車種・グレード・状態・そのときの中古車相場によって差が出ます。値が付くかどうかを推測で決めず、実際に金額を出してもらうのが確実です。査定額は買い替え側の総額から直接差し引かれる数字なので、判断の前に把握しておく必要があります。
買い替えの見積もりを先に取るのと、査定を先に取るのはどちらですか?
順番そのものに優劣はありませんが、査定額が空欄のままでは買い替え側の総額が計算できません。新車やリースの見積もりだけを先に見ると支払額の大きさばかりが目に入り、乗り続ける側に判断が傾きやすくなります。逆に査定額だけを見ても比較にはなりません。両方の数字を揃えてから同じ1年あたりに直して比べるのが公平です。